高校3年のとき、大臼歯に、黒い溝を発見した。

少年から、青年に向かってぐんぐん成長している時期で、植木等の虫歯の歌が流行っていた。
まだ若いのに、これからは、どんどん衰えていくだけなのか・・・と妙な喪失感を味わった。

新入社員のころ、仕事が忙しくなると出る症状は、胃のもたれであるが
医者に行くと神経性胃炎といわれ、効き目のない薬を2,3回飲めば、面倒くさくなって、症状まで忘れてしまうのが、いつものことであった。

残業が100時間を越えると動悸、期外収縮がおこり、心臓ノイローゼの精神状態で24時間心電図計を身につけたり、薬を服用したり、あるいは会社をやめようかとも考えたりしているうちに症状は治まるが、4,5回繰り返しているうちに、会社を辞めてしまった。
その後は自分で起業するしかないので、今のような会社をやる羽目になった。

会社はじめると、今度は資金繰りプレッシャにより、夜も眠れなくなる。
2日くらい、眠れなくて寝床で時計を眺めているだけで、そのうち顔がドス黒くなってくる。

零細企業の経営者の資金繰り病として、顔色悪いとか、熟睡できないとか、テレビで話題となるが、自分で罹ってみて、なるほどと感心はしていられないが本当のことである。
処方箋は、忙しくなることで、3、4ヶ月分の仕事が入れば、コロッと治癒するが、自殺する人もいるから重篤な病気であるともいえる。

二人目の子供が生まれるというある日、目を覚ました、天井の桟がゆらゆらして、吐き気がしてきたので、おかしいなと思っていたらグルンとあたりが回りだした。
こりゃ大変だ、今俺が倒れたら身重の女房は・・・・などと気を揉んで、救急車を呼び近所の野次馬に見送られて、病院にいった。

診察の結果、異常なしといわれバツの悪さを引きずりながら、帰宅したら、隣のばあさんに、ソリャー二日酔いだー、天井がグルングルん回るんダカラーといわれた。
そうか二日酔だったのかと安堵した次第であるが、37歳で初体験とは、酒飲みの修行が足りないと笑われても仕方がない。

このようなわけで、これまでは誇れるような病歴は無かったが、42、3歳頃、死の恐怖を味わったことがある。

逆さハナゲ(病歴2)へ続く